題名の通り

生殖医療の実態を淡々と教えてくれる本です。


これまでの常識があっさりと崩れ、脳みそをグワングワンと揺さぶられるような衝撃を受けます。

生殖医療の技術は今後も進んでいくばかり。

特に子供が適齢期を迎える30年後には
もはや自然妊娠の方が主流ではなくなってしまう可能性すらあります。

新しい技術を知っておくべきです。
生殖医療はヒトを幸せにするのか 生命倫理から考える (光文社新書)

小林 亜津子 光文社 2014-03-18
売り上げランキング : 176076
by ヨメレバ




この本が優れているのは

「生殖医療技術の紹介するだけでなく、当事者たちの思いをきちんと紹介している」ためです。


例えば


・精子ドナーにより生まれた子どもたち


精子ドナーによる人工授精で生まれた子どもは現在までに、日本だけで1万人以上が生まれているといわれています。

海外ではもっと多くの子どもが誕生しています。


これらの多くは計画的シングルマザーが精子バンクを利用して、子どもを産むというパターンが多いようです。

これは産む側の権利を重視し、技術・制度を整えた結果です。


しかし、精子ドナーによって生まれた子供たちの立場・権利はあまり考えられてきませんでした。


彼らはこう思っています。
みずからが慶応大学でのDI(提供精子人工授精)で生まれたことを実名で公開した男性は、DIの「一番の問題は、生まれた子どもが大きな精神的負担を強いられること」だと言います。「遺伝上のルーツを知ることができないこと、そして両親が子どもに事実を隠そうとすることだ」
「それまでの私も本当の自分ではないような気がしました。AID(提供精子人工授精)で生まれたことも、母親と『精子』というモノで自分ができているような感じがすごく嫌だった。私が提供者を知りたいと思うのは、生命の誕生する現場に確かに『人』がいた、ということを実感したいからなのです
子どもたちの思いは切実です。


私は一概に精子ドナーによる人工授精が悪いと言いません。

ただ、生まれてくる子どもがどんな気持ちになるのか、そしてその子供たちを支える覚悟をもてるか、それをきちんと知った上で判断してほしいです。





上記の例以外にも当事者たちの思いがしっかりと書かれています。


・卵子凍結
 →卵子凍結を行う女性の思い、卵子老化というプレッシャー

・死後生殖
 (生前に凍結保存しておいた精子で妻が出産)
 →死亡した人の意思、残されたものの意思

・着床前診断
 →先天性異常が見つかった場合の親たちの思い

・体外受精
 →受精時に精子を選ぶ医師が感じるプレッシャー(命を選ぶことであり、非常に大きなプレッシャーがかかる)

・代理母出産
 →依頼主の思い、依頼された代理母の母性の目覚め

・親が5人いるケース
 (不妊の依頼主夫婦が精子ドナーと卵子ドナーの提供を受けて、代理母に産んでもらった場合。親は5人となる。最終的に依頼主は離婚し泥沼化した。)
 →それぞれの親の思い
 


特に最後のケースなんてのは驚愕です。ですが現実に起こったことです。


これからもどんどん増えていくことでしょう。



様々な医療技術に賛成や反対をする前に、

まず当事者たちの気持ちを知るべきだと思いませんか??



この本は賛成・反対を押し付けることなく、淡々と技術の紹介・当事者たちの思いの紹介をしてくる良書です。


強くおススメします。


生殖医療はヒトを幸せにするのか 生命倫理から考える (光文社新書)

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